理事長ごあいさつ

理事長写真井上科学振興財団の創立者である井上節子夫人は、若い頃から健康に恵まれず、病院に入退院を繰り返し、闘病生活を送っていらっしゃいました。生命の危機を何度か迎えられましたが、そのたびに医学・医療の進歩に助けられたご経験から、井上夫人は医学のみならず社会の発展を支えてきた科学の進歩に感謝の気持ちを抱いておられました。そこで夫人は、御病床から浄財を基金として財団を設立し、ご自身を含め社会全体も恩恵を受けてきた科学の進展に役立てることを志されました。この井上夫人のご意志に沿って当財団を創立し、初代の理事長を勤められた茅 誠司先生は、科学・技術の発展を支えることの重要性を考え、恵まれない立場にある、基礎科学の若手研究者を支援することを中心に、財団の活動を計画されました。井上夫人は財団の第一回の表彰式を待つことなくご逝去されましたが、そのご遺志により、資金と不動産を御遺贈頂き、今日の財団の活動の基盤が確立いたしました。
 井上夫人のご遺志に添い、本財団のプログラムは、いずれも若手研究者を対象としています。まず井上研究奨励賞は、全国の関係大学長に候補者の推薦を依頼して選考を行い、優れた博士論文を提出した若手研究者に贈呈するもので、大変特色ある賞となっています。井上リサーチアウォードは、自然科学の基礎的研究で優れた業績を挙げ、更に開拓的発展を目指す若手研究者の独創性と自立を支援することを目的とした賞です。井上学術賞は自然科学の基礎的研究で特に顕著な業績を挙げた新進気鋭の50歳未満の研究者に贈呈する賞で、受賞を機に、新たな視点で更に優れた研究成果を挙げる一方、優れた人材養成にも力を尽くしていただくことを期待して贈呈する賞です。国際研究集会の開催経費援助は、我が国で開催される国際研究集会で、学問的意義の大きい比較的小規模なものに対する支援資金で、若手をはじめとした研究者の国際研究集会への参加の機会を増やすことを意図したプログラムになっています。
わが国の研究力、特に基礎研究力は、大変残念なことにこの20年間伸び悩んでいます。このような状況の今こそ、基礎科学を目指す若手研究者を支える当財団の活動はますます重要となっていると思われ、その支援に最大限の努力を重ねて参ります。引き続き皆様のご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2024年6月
公益財団法人
井上科学振興財団
理事長 小間 篤

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